大人が振り返る「アリとキリギリス」人生はお金か自由の2択なのか

童話を読み返す
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「アリとキリギリス」
この話は真面目に働かないと死んでしまう…という単純な話ではない。
「お金を貯えるために時間を使う」か「今自分のしたいことに時間を使う」のか。
資本主義社会の大きな悩みに対して考えさせてくれる童話。
時間やお金を無駄使いして後悔したり、浪費を抑えて働いて楽しさがない。
そんな風に偏ってしまいがち。
でも人間の人生はその2択では語れない。今一度バランスを考えてみよう。

本編のあらすじ

全体としては虫の世界の一年を切り取った物語になっている。
登場するのは働き者のアリ達とバイオリン片手に自由を満喫するキリギリスの2キャスト。
アリ達は夏の間に食べ物を自らの巣に貯え続けているのに相反し、
キリギリスはそのアリ達を横目にバイオリンを弾いたり歌ったり、遊んでいる様子。

そのまま冬になり、貯えをしなかったキリギリスは食べ物がなくなり餓死
という結末を迎える。

キリギリスの人生は失敗だったのか

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私の知っている物語でキリギリスの結末は死だった。
貯えがあれば春を迎えられたという点では失敗だったのかもしれない。
もちろん死んでしまっては元も子もないという見方は大体の人がそう思うだろう。
しかし、キリギリスは死ぬ間際に後悔があったのだろうか。
もともと短い一生にキリギリスはこれだけはやっておきたいと
行動を厳選していたようにも思える。
たとえ命削ろうとも自分に素直になり、一生を全うできたのではないか。
死の間際振り返る人生という点では成功だったと思える。

または近づく冬(死)に対して毎日不安で怯えていたのかもしれない。

アリの人生は成功だったのか

確かにアリは冬を乗り越えて、春を迎えることができた。
この点において生存という成功を収めている。
しかし、組織に属しており(というより組織の中でしか生きられない)独立した個がない。
個で見たとき一匹のアリの一生は幸せで後悔のないものだったのだろうか。
宛てのない旅に出たかったとか、絵を描いたり、音楽を奏でたりできたのだろうか。
死の間際振り返る人生という点では失敗だったと思える。

または巣穴に戻ってから毎日、仲間と酒盛りお祭り騒ぎであったのかもしれない。

いまの私達に置き換えて考える

虫の世界で貯えた食べ物は現代ではお金にあたるだろう。
逆にキリギリスの行動は現代では浪費活動にあたると考える。

資本主義が加速する今この世の中でキリギリスの行動は輝かしくも愚かに見える。
アリの行動は堅実だが面白味を感じず、虚無に感じる。

ある日突然働けなくなったり解雇されたとき、貯えがなく途方にくれるかもしれない。
ある日突然事故や病気になって貯えがあるのに余生を楽しめないかもしれない。
この点については人間社会も虫社会も同様で明日や未来のことはわからないということ。

大人の今振り返って思うこと

子供の頃は死=悪い結果という認識は多くの人がそう思ったし大人からも教わったことと思う。
そのため本作のキリギリスはダメな生き方だったという印象しか残ってない人もいる。
「真面目に働かなければならない」「お金にならない無駄なことはしてはいけない」
「個では生きられないから組織に属さねばならぬ」という社会にとって都合の良い刷り込みが
あるのでは…という疑心暗鬼も大人の今感じるところである。
 ※これを書いて自分も無垢な子供でないことに気づき一抹の寂しさを感じた…のは別の話。

反感あるかと思うが、私は本作登場のアリを外国から見た日本人の様相と重ねてしまう。
毎日朝晩の通勤、放蕩する者への容赦ない疎外、黒スーツの行進はアリさながらである。
島国の日本では働かない者に食を与えるほど豊かでなかった。
仕事が人生における一番の楽しさだった時もあった。(玉屋、鍛冶屋などの代々暖簾を繋ぐ名門)
そういう時代背景からの文化もあるだろう。

余談だが、ニホンアリは健気で大好きだし見習うことが多い…余談であった。

しかし、お金にならないことを徹底排除し、自分の人生を送れないことは恐ろしいことだと思う。
働き過ぎと言われる日本人にはちょっとだけキリギリス寄りになっても良いのかもしれない。
アリのように死ぬ間際に食べ物だけ沢山あって素直に生きられなかった後悔はしたくない。
キリギリスのように後悔がなかろうとも短すぎる人生にはしたくない。
そう、私(我々人間)は大いにわがままである。それでよろしい。

まとめ

本作に出てくる虫と違い、人間には教訓を得て創造することができる。
創造とは虫や鳥が巣を作るような本能的なことではなく、未来を想像して実現に至るまでの
過程を調整しながら実現できること。
結果を創造する=充実した人生だったと幕を下ろす
結果に至る過程=お金に困ることない範疇で浪費(自由)を楽しむ。
バランスというありきたりな締めくくりになる。
時に一所懸命に働き、時に盛大な浪費を行い悔いのない人生を創造していきたい。

個人的な感想が途中入ったが、こういった童話は様々な意見・感想があると思います。
思ったことや鋭い考察、人生哲学などのコメントいただけると幸いです。
いただいたコメントでさらに深く考える機会を得られると思います。

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